能楽とは
能ってなんだろう、なにかしら。よくわかんない。
そんなあなたに、まず、ここを見ていただきたくて命名しました。
どうかお役に立てますように。
能というと、お面つけて豪華な服着てなにやら唸ったり緩慢な動きをしたり……
あの人はいったい何をしているのでしょうか。
それは、お芝居、劇をしているのです。
ただ、「劇」と一口にいっても能独自の特徴がたくさんたくさんあります。
台本(謡本)、発声(謡)、所作(舞)、音楽、舞台、装束、そして能面。
能面を用いる、仮面劇。
楽器の演奏もあって役者も謡う、音楽劇。
曲の主題を舞で表現する、舞踊劇。
600年以上も上演され続けてきた、古典芸能。
それが、能楽です。
現在、演能される曲は200〜250ほどあり、その曲種は主に五つに分類されます。
初番目物(脇能・神) 文字通り、神様が主人公です。旅に出た人がたまたまいわくありげな老人に出会い、話しているうちに実は神様の化身だということが分かり……そして後に神様本来の姿で現れて下さるという実におめでたく、颯爽とした曲です。
◆高砂、養老、難波、嵐山、絵馬、西王母、老松、鶴亀など。
「竹生島」前シテ:漁翁
前ツレ:蜑女
「竹生島」後ツレ:弁才天
「竹生島」後シテ:龍神
竹生島―― (前)朝臣が漁翁と蜑女の釣り舟に乗り竹生島へと向かいます。
(後)女は弁才天、翁は龍神となって現れ、朝臣に宝珠を与えます。
二番目物(修羅能・男) 死後、修羅道に行く人すなわち戦士のお話です。源平の武将が多いです。戦う運命を背負った人が苦悩しつつもいかに凛々しく戦ったか、そしていかに花鳥風月を愛したか、芸術を愛したか、という感じです。出典としては平家物語が大人気です。
◆敦盛、清経、田村、兼平、頼政、巴など。
「田村」前シテ:童子
「田村」後シテ:坂上田村麿
田村―― (前)東国の僧は清水寺で、不思議な童子に出会います。
(後)坂上田村麿の亡霊が現れ、鈴鹿山の鬼神退治の有様を再現します。
三番目物(鬘能・女) 伊勢物語や源氏物語から取られた優美な女性を主人公としたしっとりとしたものが多く、「鬘能」の名がついていますが女の人に限られているわけではありません。在りし日を忍ぶ幽霊や草木の精が現れます。
◆井筒、松風、熊野、杜若、小塩、西行桜、遊行柳、姨捨、関寺小町など。
「羽衣」シテ:天人
「羽衣」シテ:天人
「杜若」シテ:杜若の精
羽衣―― 天女が天の羽衣を漁師に取られたため帰れなくなり哀しみますが、月の舞を見せることと引き換えに返してもらい、舞いながら天上へ帰っていきます。
四番目物(雑能・狂) 他の四つのカテゴリーに収まらなかった物はここへ分類されます。「狂」の文字に表れている通り狂女物が代表的ですが、多種多様な話があります。この四番目物の特徴を敢えて挙げるとすると、物語性があり、展開がドラマチックなものが多いといえます。
◆隅田川、通小町、砧、葵上、道成寺、望月、邯鄲、安宅、烏帽子折、景清、俊寛など。
「巻絹」シテ:巫女
「巻絹」ツレ:都の男
巻絹―― 熊野神社に巻絹を納めるのが遅れた罰を受ける都の男。そこへ男に和歌を手向けられた天神が巫女に乗り移って助けに現れ、神楽を舞います。
五番目物(キリ能・鬼) 人ではない、化生の物や天狗などを主人公とし、後に本性を現す曲です。異形視され、退治される側を主人公に据えるものが多いのが能の特徴といえるでしょう。話の形式は様々ですが、全体的に華やかでスケールが大きく、舞台を縦横無尽に動き回る豪快さが魅力です。
◆土蜘蛛、紅葉狩、殺生石、山姥、鞍馬天狗、船弁慶、海士、融、石橋など。
「小鍛冶」前シテ:童子
「小鍛冶」後シテ:稲荷明神
小鍛冶―― (前)小鍛冶宗近は稲荷神社で不思議な童子に出会います。
(後)稲荷明神が現れ、宗近に協力して天皇に捧げる名剣をうちます。
謡(歌と台詞)・囃子・所作(舞と動き)。
音楽劇であり舞踊劇でもある能楽は、この三つの要素で成り立っています。
謡と所作はシテ・ワキ・狂言方が、
囃子は笛・小鼓・大鼓・太鼓の囃子方が受け持っています。
能は、いろいろな部分の組み合わせで成り立っている面白い芸能です。
その部分を取り出したり組み合わせたりして楽しむことができるのです。
連吟 (謡のみ)<曲の一部>
謡曲の謡いどころを一部分取り出し、複数で声をそろえて謡います。一人で謡うと「独吟」となります。素謡 (謡のみ)<一曲全部>
謡一曲全部を通して謡います。役も割り振って謡います。謡を聴いて場面を思い浮かべるのは能とはまた違った面白さがあります。仕舞 (謡+舞)<曲の一部>
曲の舞どころを謡にあわせて舞います。一つ3分〜10分ぐらいです。舞どころはすなわち曲の主題が込められているところといってもよく、面白いものです。舞囃子 (囃子+謡+舞)<曲の一部>
囃子と舞だけの部分(舞事)を舞います。仕舞と舞事がつながった形になり、一つ10分〜30分ぐらいです。詞章のない部分でも曲の主題を表すのが舞の醍醐味です。能楽(囃子+謡+舞)<一曲全部>
これがいわゆる「能」となります。お話を通して面・装束・作り物もすべて用いて行います。一曲30分〜2時間ぐらいです。
奏演形態は他にもいろいろあります。
・囃子のみ …… 素囃子、
・謡+囃子 …… 一調、一調一管、番囃子などなど。
……いや、ふまえなくていいんです、知識がなければ見られないということはありませんもの。
興味をもたれた方はぜひとも、舞台で本物のお能を見てみてくださいね。
<R.M>
一部写真追加<K.T>