千鳥(ちどり) シテ:太郎冠者 アド:太郎冠者の主人 小アド:酒屋 主人に酒を買ってくるよう言いつけられた太郎冠者。「買ってこい」とはいっても、お金は持たせてもらえません。そう、いつものようにツケで買ってこいとの仰せなのです。 いくら酒屋のだんなさんと友達とはいえ、ツケは溜まりに溜まりまくってるだけにそうおいそれと酒を渡してくれるはずもありません。前途多難なお使いです。 「持ってきたはずだが、はて、どこにいれたものだか」なんて、あるはずのないお金の包みを探して懐や袂を探ってみたり。家に置き忘れてきたのでまず酒を持って帰り、金は後で持ってくる、といってみたり。しかし、やはり今回の酒屋のだんなさんは手厳しく、容易に持って行かせません。 さて、この酒屋のだんなさんときたら無類のお話好き。太郎冠者が尾張の津島祭を見てきたところだときいて、旅行の面白い話をせがみます。要望にこたえて身振りを交え、だんなさんも巻き込んで土産話を始める太郎冠者。そして、話をしながらもあの手この手で何とかして酒を持って帰ろうと画策します。 囃し言葉がとても印象的かつ効果的な狂言です。一度聞くと耳について離れません。ちろりとご紹介しておきますね。ああ、そう書いているうちにもう頭の中をぐるぐるしはじめました…… *その1 「はんまー(浜)千鳥の友呼ぶ声はー」 「ちりちりーやー、ちりちりー ちりちりーやー、ちりちりー……」 *その2 「チョウサヤヨウサ ヨウサヤチョウサ」 「エイトモ エイトモ エイトモナ、エイトモ エイトモ エイトモナー」 *その3 「ばーばー(馬場)のけ ばーばーのけ」 「おんま(お馬)が参る おんまが参る」 太郎冠者は無事主人の元へ酒を持って帰ることができるのでしょうか? 太郎冠者の奮闘振りをぜひとも舞台でご覧ください。
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